いなか、の、じけん

 夢野久作著『いなか、の、じけん』を読みました。

 ドグラマグラを書いた作家さんですので、このタイトルだとミステリ的な内容を想像されるかと思いますが、ミステリではなく、夢野氏の出身地である九州で実際に見聞された騒動の数々を淡々とした語り口で紹介しています。

 全体的にかなり不気味な印象を受ける作品集です。それは人が死ぬ話や誰かが不幸になる話が多いからというのももちろんあるのでしょうが、それよりも、登場人物の中に読者である僕と似たような価値観を持っている人間がほとんど出てこないからです。

 登場人物が何故そのような行動に出るのかよくわからない。そのような考えに至るのか理解できない。そこが不気味なのです。

 なにか、近代化する前の日本を目の当たりにしているような不思議な気持ちにさせられる作品集でした。